こんにちは、BIZROVEです!
EC市場の拡大に伴い、医薬品のネット販売を始めたいと考える事業者も増えています。
とくに「顧客の利便性向上」や「営業時間の拡張」「販路の全国展開」など、ECならではのメリットが注目されています。
しかし、医薬品の販売には「薬機法」をはじめとした厳格なルールが存在し、違反すれば行政処分や営業停止のリスクもあります。
本記事では、とくに一般用医薬品(OTC医薬品)をインターネットで販売する際に注意すべき法規制や準備事項について詳しく解説します。
医薬品の分類
一般用医薬品は、副作用リスクに応じて以下の3つに分類され、それぞれで販売に必要な資格やECでの取り扱い条件が異なります。
分類 | 主な特徴 | 販売者要件 | EC販売可否 |
---|---|---|---|
第一類医薬品 | 副作用リスクが高め(例:ロキソニンS、リアップ) | 薬剤師 | 可能(条件付き) |
第二類医薬品 | 比較的リスクが低い(例:風邪薬、鎮痛剤) | 登録販売者または薬剤師 | 可能 |
第三類医薬品 | さらにリスクが低い(例:ビタミン剤、整腸剤) | 登録販売者または薬剤師 | 可能 |
2014年6月、厚生労働省により、すべての一般用医薬品のインターネット販売が解禁されました。これは、最高裁判決や時代の流れにより「実店舗での購入と同様に安全に購入できる環境がECでも整えば問題ない」と判断されたためです。
しかしその分、対面販売と同等の安全性・情報提供体制をECでも構築することが求められています。
EC販売には「実店舗」が必要? 意外と知られていない要件
医薬品をネットで販売するには、実店舗と人員体制など、以下のような条件を満たしていなければなりません。
実店舗要件とは?
医薬品をECで販売するには、薬局または店舗販売業の許可を受けた実店舗の存在が必須です。これは単に「リアル店舗がないと売ってはいけない」というルールではなく、購入者の健康被害を未然に防ぐために「相談・保管・責任」の体制を可視化することが目的です。
- 購入者からの対面相談ができる体制の担保
- 実際に在庫が管理・保管されているという証明
- 薬剤師・登録販売者の配置が確認できる環境の維持
つまり、ECはあくまで「情報提供・販売チャネルの一つ」であり、「店舗販売の延長」であるという考えが前提となっています。
実店舗の運用要件
- 週30時間以上の営業
- 薬剤師・登録販売者が常駐
- 店舗名・許可内容などの表示義務
- ECサイト上に実店舗の写真や薬剤師名の表示 など
このように、実店舗は単なる拠点ではなく、薬機法上の信頼性を裏付ける装置でもあります。
ECサイトの運用条件
- 許可証情報・実店舗の情報をECサイト上に表示
店舗名、所在地、薬局・販売業の許可番号、発行自治体などを明記することが義務づけられています。 - 薬剤師・登録販売者の氏名を掲載
情報提供責任者として、勤務する薬剤師または登録販売者の名前を公開する必要があります。 - 実店舗の外観写真を掲載
実在性と信頼性を担保するため、運営拠点としての実店舗の写真をサイト上に掲載します。 - 情報提供・相談の導線を設置
購入者が商品購入前に薬剤師等へ質問・相談できる手段(電話・チャット・フォームなど)を用意することが求められます。 - 購入時の確認チェック機能の実装
「説明を読み理解したか」「相談の必要がないか」など、購入者が内容を把握したうえで購入したことを確認する仕組みを設けます。 - レビュー・レコメンド機能の非表示
医薬品の効果に関する誤解を防ぐため、レビュー投稿や類似商品の自動レコメンド表示は禁止されています。 - 販売数量の制限・制御
医薬品の乱用を防ぐため、購入可能な数量を制限する機能を備えます。
このように、ECサイトは「対面販売と同等の安全性・正確性」を確保するための設計が求められるチャネルであり、単なる通販サイトとは異なる細かな配慮と体制構築が必要です。
さらに、情報量が多くなりがちな医薬品ECサイトでは、視認性の高いレイアウト設計や、検索性・比較性の工夫も重要です。UXの観点からも、ユーザーが迷わず必要な情報にたどり着ける設計が求められます。
ECサイトでの掲載義務・運用ルール
販売サイト上で、以下の情報を明記・掲載する必要があります。
表示義務事項
- 実店舗名・写真
- 許可番号・所管自治体
- 薬剤師・登録販売者の氏名・勤務状況
- 対応可能な相談時間・問い合わせ方法(電話・メール)
販売時のルール(購入者とのやりとり)
- 購入者が情報提供を理解したことの確認
- 妊娠中・授乳中など特定条件への注意喚起表示
- 第1類医薬品販売時は薬剤師による確認と文書提供が必須
- 乱用防止のための販売数制限
- クチコミ・レビュー・レコメンドの表示禁止(誤認防止の観点から)
- オークション形式の販売は禁止
医薬品ECを始める前に準備すべきこと
法的手続き・許認可の取得
- 薬局または店舗販売業の許可を取得
- 薬剤師または登録販売者の雇用
- 実店舗の設置・営業時間などの要件確認
ECシステム・UXの整備
- 商品ページでの情報提供の工夫(テキスト、動画)
- 購入フロー内に「確認チェック」導線の実装
- 薬剤師への質問受付導線(チャット、電話、フォームなど)
表示義務への対応
- 各種許可証、写真、スタッフ情報の掲載
- ECツールによる動的な表示補助の導入も検討
社内体制・教育
- 対応マニュアルの整備
- 誤購入・返品への対応ルール
- 薬剤師・販売員との連携体制の構築
よくある疑問:「なぜレビューが禁止なの?」「実店舗って必要?」
なぜレビューやレコメンドが禁止されているのか?
医薬品は使用者の体質や状況によって効果が大きく異なるため、他者の感想や体験が誤解を招く恐れがあります。副作用リスクもあるため、個人の感想に頼らず、薬剤師等からの科学的根拠に基づく情報提供を原則とする方針です。
実店舗って今も本当に必要?
2025年現在も、薬機法の定めにより実店舗は必須です。理由は、
- 購入者が対面相談を受けられる環境
- 在庫や品質管理がされているという信頼性
- 法的責任の所在が明確になる など
今後制度変更の可能性はありますが、現時点ではこの要件はEC参入時の大きなハードルとも言えます。
違反リスクとその影響
薬機法に違反した場合、以下のようなペナルティを受ける可能性があります。
- 行政指導・警告
- 業務停止処分
- 販売許可の取消し
- 消費者トラブルによる信用失墜
※とくに「第1類医薬品」の無資格者による販売は重大な違反となります
まとめ
医薬品のEC販売は、法的制限が多いものの、適切な体制と運用で安全かつ安定的に行うことが可能です。とくに第1類医薬品を扱う場合は、薬剤師の対応や情報提供の仕組みをしっかり整備する必要があります。
法規制を遵守しながら効率的に運営するためには、薬機法に詳しい専門家や、医薬品ECに精通した外部パートナーの協力も重要です。
ACROVEでは、医薬品を取り扱うECサイトの構築やECモールの出品をご支援しています。お悩み事やご相談事がございましたら、以下バナーよりお問い合わせください。