こんにちは、BIZROVEです!
今回は「自社でAmazonや楽天のようなモールって作れるの?」というテーマで、自社モール構築の可能性を掘り下げていきます。
この記事では、主要なモール型ECの種類とその特徴を整理しながら、自社にとって最適な運営モデルを見極めるためのヒントをお届けします。モール型ECの構築を検討している方は、ぜひ最後までご覧ください!
モール型ECの種類と特徴
モール型ECサイトと一口に言っても、いくつかのタイプがあります。自社のビジネスモデルに応じて、どのタイプが適しているかを見極めることが重要です。
マーケットプレイス型
マーケットプレイス型は、複数の出店者が一つのプラットフォーム上に商品を出品し、販売するスタイルのECモールです。AmazonやQoo10が代表例で、出店者は商品情報を登録するだけで比較的簡単に販売を開始できます。商品ごとに出品される形式のため、顧客はブランドよりも価格やレビューなどを基準に商品を比較・購入する傾向があります。決済や配送、カスタマー対応などをモール側がサポートしてくれるケースも多く、スムーズな運用が可能です。
メリット:
- 出店のしやすさ: サイト構築不要で、商品登録のみで始められる手軽さ
- 集客力の活用: モール自体にアクセスが集まりやすく、販促の初期負担が小さい
- 運営支援が充実: 配送や決済、顧客対応などをモールが代行してくれる場合が多い
デメリット:
- 価格競争に巻き込まれやすい: 同一商品が複数出品され、価格やレビューで比較される
- ブランドの印象を伝えづらい: 商品単位での購入が多く、世界観の表現が難しい
- 手数料がかさむ: モールへの販売手数料や利用料が一定の負担となる
テナント型
テナント型は、出店者がモール内に自社の「店舗」としてページを持ち、独自のデザインや販促を行える形式です。楽天市場やYahoo!ショッピングなどがこの形に該当します。各ブランドが自社ECサイトのようにページを作り込み、世界観を打ち出すことができるため、ブランディングを重視する企業に向いています。
メリット:
- ブランド表現が可能: 店舗ごとにデザインやキャンペーンを自由に設計できる
- モールの集客を活用: 大手モール内に出店することで集客効果が得られる
- リピーター施策に強い: モールのポイント制度やレビュー、メルマガなどの機能が活用できる
デメリット:
モール依存のリスク: モールの仕様変更やルール改定の影響を受けやすい
運用負荷が大きい: 店舗運営やページ制作、販促などを自社で行う必要がある
競合との比較が避けられない: 同一ジャンルのショップが並び、比較されやすい
事例:楽天市場など
統合管理型
統合管理型は、複数ブランドやカテゴリを展開する企業が、自社ドメイン内にブランド横断型のモールを構築するスタイルです。ブランド間で会員情報やカート、ポイントを共通化でき、顧客体験をシームレスに保ちやすいのが特長です。特にアパレル業界など、複数ブランドを保有する企業にとって、効率的な運営が可能となります。
メリット:
- ブランド横断の購買導線: 一つのサイトで複数ブランドをまたいだ商品提案や購入が可能
- 顧客データの一元化: 顧客行動や購買履歴を一つのシステムで管理・分析できる
- 業務効率の向上: サイト構成やシステム、物流体制の統合により、運営効率が高まる
デメリット:
- 構築コストと時間がかかる: 多ブランドに対応した設計が求められ、開発規模が大きくなる
- UI/UX設計の難しさ: ブランドごとの個性と統一感を両立させるデザイン設計が必要
- 社内調整が煩雑になりやすい: ブランドごとに販促や在庫方針が異なり、調整が必要
BtoBマーケットプレイス型
特徴:
BtoBマーケットプレイス型は、企業間取引(Business-to-Business)に特化したECモールです。部品、原材料、オフィス用品、卸売商品など、法人間の取引に必要な商品やサービスが取引されます。価格表示は数量に応じて変動したり、見積もり依頼が必要な場合が多く、在庫管理や発注フロー、決済方法などもBtoCとは異なる設計思想が求められます。
メリット:
- 効率的な調達・販売:法人間取引を効率化し、サプライチェーン全体の最適化に貢献できる
- 新たな販路開拓:これまで取引のなかった企業との接点を持ち、新たな販路を開拓できる
- 取引の透明性向上:価格や在庫情報などが可視化されることで、取引の透明性が向上する
- 専門的な機能:大量注文、掛け払い、見積もり依頼など、BtoB取引特有の機能が充実している
デメリット:
- 特殊な設計・開発:BtoCとは異なる商習慣や業務フローに対応したシステム開発が必要となるため、コストや期間がかかる
- 参加企業のネットワーク構築:参加企業を効果的に集め、活発な取引が行われるためのネットワーク構築が重要となる
- セキュリティ対策:機密性の高い情報や大口の取引が行われるため、高度なセキュリティ対策が求められる
事例:モノタロウ、Alibaba.com
自社モールの構築ステップ
自社モール構築は、多岐にわたる検討事項と段階的なプロセスを伴います。以下に、一般的な構築ステップとその主要な検討事項を示します。
企画・戦略策定
自社モール構築の目的、ターゲット顧客、取り扱う商品・サービス、独自のコンセプトや強みを明確にし、成功のためのKPI(重要業績評価指標)を設定します。また、出店料、手数料、広告収入など、どのような収益モデルを採用するのかも検討します。
要件定義
自社モールに必要な機能を具体的に洗い出します。出店者管理、商品管理、注文管理、決済、配送といった基本的な機能に加え、レビュー機能、ポイントシステム、クーポン発行、会員制度など、独自の機能も検討します。将来的な拡張性や、関連法規制、セキュリティ要件も考慮に入れる必要があります。
プラットフォーム選定
モール型ECサイトの構築を検討する上で、基盤となるカートシステムの選定は非常に重要です。
ここでは、モール型に対応可能な主要なプラットフォームを比較し、それぞれの特徴を概観します。
カート名 | モール対応 | 出店者管理 | 商品一括管理 | 拡張性 | 初期費用 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|
Magento(Adobe Commerce) | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | 高 | 要開発体制 |
Shopify Plus | △ (アプリ連携で対応) | ○ (カスタム必要) | ○ | ◎ | 高 | 外部開発必要 |
ecbeing | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | 高 | 大手企業向け |
futureshop | △ (要個別開発) | △ | ○ | △ | 中 | 柔軟性低め |
Makeshop for biz | ○ | ○ | ○ | ○ | 中 | BtoB向けにも可 |
近年注目されているヘッドレスコマースは、フロントエンド(顧客が見る画面)とバックエンド(システム)を分離するアーキテクチャで、柔軟な顧客体験の提供や将来的な技術変化への対応力を高めることができます。
また、BtoB ECで例に挙げたモノタロウのインドネシアサイトは、Magentoで作られています。
モノタロウ インドネシア: https://www.monotaro.id
デザイン・UI/UX設計
ブランドイメージに合致した魅力的なデザインと、顧客と出店者双方にとって直感的で使いやすいUI/UX(ユーザーインターフェース/ユーザーエクスペリエンス)を設計します。スマートフォンからのアクセスが主流となっているため、モバイルファーストの考え方が重要です。
開発・構築
プラットフォームの選定結果に基づき、自社モールの開発・構築を行います。内製化と外部委託のメリット・デメリットを比較検討し、最適な開発パートナーを選定することも重要です。開発後は、十分なテストと品質保証を行う必要があります。
出店者募集・オンボーディング
クローズドモール型の場合は、明確な基準に基づいた出店者募集戦略を策定し、契約プロセスやモール規約を丁寧に説明します。出店者向けのトレーニングやサポート体制の整備も、モールの活性化には不可欠です。
マーケティング・集客
モール全体のプロモーション戦略を策定し、SEO対策、SNS活用、広告運用など、多様なチャネルを通じて集客を図ります。出店者による販促活動を支援する仕組みも検討します。
運用・保守
モール公開後の日々の運営体制(カスタマーサポート、システム監視、コンテンツ更新など)を確立します。定期的なメンテナンスやアップデートを行い、セキュリティ対策を常に最新の状態に保つことも重要です。データ分析に基づいた継続的な改善も欠かせません。
モール構築時に特に検討すべきポイント
モール型ECサイトの構築は、単に複数のショップを集めるだけでなく、円滑な運営と顧客満足度の向上、そして出店者の成功を考慮した綿密な設計が不可欠です。ここでは、とくに検討すべき重要なポイントを掘り下げて解説します。
出店者の管理画面と運用設計
各出店者が日々の業務を行うための管理画面は、モールの使いやすさを大きく左右する要素です。商品登録、在庫更新、注文確認、売上管理、顧客対応など、出店者にどこまでの権限を与えるのかを明確にする必要があります。また、管理画面のUI/UXは、出店者の作業効率に直結するため、直感的で使いやすい設計が求められます。
検討事項:
- 権限設定:商品登録、価格変更、在庫管理、注文処理、顧客情報閲覧など、出店者に許可する操作範囲を決定する
- 情報共有:モール運営者からの告知や連絡事項を、各出店者にどのように効果的に伝えるか
- レポート機能:出店者が自身の売上やアクセス状況などを確認できるレポート機能の範囲と見やすさ
- サポート体制:出店者からの問い合わせ対応窓口、FAQ、マニュアルなどの整備
- 契約・規約管理:出店契約内容やモール規約の確認、更新などをオンラインで行える機能
ポイント:出店者がストレスなく、効率的に業務を行える環境を整備することが、出店者の満足度向上とモールの活性化につながります。
決済・受注処理の分担
顧客からの決済をモール全体で一括して行うのか、各出店者が個別に決済システムを導入するのかは、運用フローやコストに大きな影響を与えます。受注処理についても、注文データの連携方法、配送方法、伝票発行などをどのように分担するのかを明確にする必要があります。
検討事項:
- 決済方法:クレジットカード、銀行振込、コンビニ決済、電子マネーなど、導入する決済手段の種類と手数料負担
- 決済代行サービス:モールが一括で契約するのか、出店者が個別に契約するのか
- 売上金の入金サイクル:モールから出店者への売上金支払いのタイミングと手数料
- 注文データの連携:顧客の注文情報を各出店者にどのように連携するか(API連携、CSVデータなど)
- 配送方法:モール共通の配送業者を利用するのか、出店者が個別に配送方法を選択できるようにするのか
- 返品・キャンセル処理:返品・キャンセルの受付窓口、処理フロー、費用負担などを明確化する
ポイント:顧客と出店者の双方にとってスムーズで分かりやすい決済・受注処理フローを設計することが、信頼性の高いモール運営の基盤となります。
商品情報とカテゴリの統一
モール全体で取り扱う商品の商品名、商品説明、画像サイズ、カテゴリ構造などに統一ルールがない場合、顧客は商品を比較しにくく、サイト全体のUI/UXが損なわれます。これは、顧客満足度の低下や離脱率の増加につながる可能性があります。
検討事項:
- 商品登録ルール:商品名、型番、JANコードなどの必須項目、文字数制限、禁止事項などを定める
- 画像ガイドライン:画像のサイズ、解像度、ファイル形式、背景色などを統一する
- カテゴリ設計:顧客が商品を簡単に見つけられるように、分かりやすく階層化されたカテゴリ構造を設計する
- 属性情報:サイズ、カラー、素材などの共通属性を設定し、検索や絞り込み機能を充実させる
- レビュー・評価:レビューの投稿ルール、表示形式などを統一し、顧客の購買判断をサポートする
ポイント:統一された商品情報とカテゴリ構造は、顧客にとって快適なショッピング体験を提供し、商品の発見性向上、ひいては売上増加に貢献します。
顧客対応はモール側か、出店者側か
顧客からの問い合わせやクレーム対応をモール運営者が一元的に行うのか、各出店者が個別に対応するのかは、ブランドイメージ、顧客満足度、運営コストに大きく影響します。ブランド責任の所在やクレーム対応の方針と合わせて、早期に明確な方針を定める必要があります。
検討事項:
- 問い合わせ窓口:電話、メール、チャットなど、顧客が問い合わせる際の窓口を一本化するか、出店者ごとに設けるか
- 対応範囲:モール全体に関わる問い合わせ(会員登録、サイト利用方法など)と、商品や注文に関する問い合わせ(在庫確認、配送状況など)の担当を分けるか
- 対応品質の管理:出店者に顧客対応を任せる場合、品質を維持するためのガイドラインや研修制度を設けるか
- エスカレーションルール:出店者では対応困難な事案が発生した場合の、モール運営者へのエスカレーションフロー
- FAQの整備:よくある質問とその回答をまとめたFAQを、モール全体と出店者向けに用意する
ポイント:一貫性のある顧客対応は、顧客からの信頼を獲得し、長期的な関係性を築く上で不可欠です。ブランドイメージを考慮し、最適な体制を構築する必要があります。
出店審査・ルール設計
とくにクローズドモール型の場合、出店者の品質がモールのブランドイメージを大きく左右するため、出店審査の基準を明確に定める必要があります。また、健全なモール運営のためには、出店規約や禁止事項、違反時の対応などを具体的に明文化し、出店者に対して周知徹底することが重要です。
検討事項:
- 審査基準:法人登記、事業実績、取扱商品、ブランドイメージ、顧客対応能力など、審査の際に考慮する項目を定める
- 提出書類:審査に必要な会社概要、商品情報、販売計画などの書類を明確にする
- 審査プロセス:申請受付から審査完了までの流れ、期間などを定める
- 出店規約:出品ルール、禁止事項、知的財産権の扱い、手数料、売上金の支払い条件などを明記する
- 違反時の対応:規約違反があった場合の警告、出品停止、強制退店などの措置を定める
- 規約の改定:規約変更時の告知方法や適用時期などを定める
ポイント:明確な出店審査基準とルール設計は、悪質な出店者を排除し、モールの信頼性と秩序を維持するために不可欠です。
これらの検討事項を踏まえ、構築フェーズの早い段階から、具体的な運用イメージに基づいた詳細な設計を行うことが、モール型ECサイトの成功への鍵となります。
よくある失敗談
カートを選んだが、要件を満たせなかった
最初に費用や知名度だけでカートを選定してしまい、途中で要件を満たせないことに気づいて再構築…というケースは少なくありません。モール型は一般的なECより要件が複雑なので、事前の入念な要件定義が不可欠です。
出店者側の管理画面が複雑で定着しなかった
複雑すぎるUIや操作性の悪さにより、出店者の運用が続かずモール全体が機能しなくなったという相談も多く寄せられます。UI/UX設計やマニュアル整備も軽視できません。
商品情報がバラバラでモールとしての一貫性が保てなかった
出店者が自由に商品情報を登録できる環境を作った結果、商品名の書き方やカテゴリが乱雑になり、モールとしての検索性・見やすさが損なわれた事例もあります。ガイドライン設計とチェック体制が重要です。
これらのトラブルは、いずれも「設計段階での検討不足」に起因しています。構築パートナーに相談し、必要な体制や要件を洗い出すことが重要です。
自社モール成功のためのヒント
自社モールを成功に導くためには、以下の点を意識した戦略的な取り組みが重要です。
- 明確なコンセプトと差別化戦略:大手モールとの差別化を図り、独自の価値を提供するコンセプトを明確に打ち出すことが重要です
- 出店者との良好な関係構築とコミュニティ形成:出店者はモールの重要なパートナーです。定期的なコミュニケーションや情報共有、意見交換の場を設け、共に成長できる関係性を築きましょう
- データ分析に基づいた継続的な改善:顧客データや販売データを分析し、課題の発見と改善策の実行を継続的に行うことが重要です
- 顧客体験の重視とロイヤリティ向上策:魅力的な商品ラインナップだけでなく、使いやすいサイト設計、質の高い顧客対応、独自のロイヤリティプログラムなどを提供し、顧客満足度を高めることが重要です
- 最新技術の活用:AIを活用したレコメンド機能やチャットボット、AR/VRを活用した商品体験など、最新技術を積極的に取り入れ、顧客体験の向上を図りましょう
まとめ
自社モール構築は、単なるECサイトの開設ではなく、自社のビジネスを新たなステージへと引き上げる可能性を秘めた戦略的な取り組みです。大手モール依存のリスクを回避し、独自の顧客体験と強固な顧客基盤を築き上げることで、持続的な成長と競争優位性を確立することができます。
今後のEC市場においては、画一的なモールではなく、それぞれの企業が持つ強みや個性を活かした自社モールが、より重要な役割を担っていくと考えられます。
ACROVEでは、マーケットプレイス型/テナント型/統合管理型/BtoBマーケットプレイス型のECサイト構築をご支援しています。ご相談事がございましたら、以下バナーよりご連絡くださいませ。