そのカート、導入して本当に得する? BtoB ECカートシステム選定ガイド

こんにちは、BIZROVEです!

近年、FAXや電話が当たり前だったBtoB企業にも、ECカートシステム導入の波が押し寄せています。背景には人手不足や業務効率化の必要性、そして顧客の購買行動の変化があります。

とはいえ、「本当にコストは下がるのか?」「まだ早すぎるのでは?」と不安な企業様も多いかと思います。

そこで今回は、判断のカギとなる「損益分岐点」と「選定のポイント」に絞って、導入検討の考え方を解説します!

損益分岐点の考え方:BtoB ECの場合に検討すべき事項

ECカートシステムの導入は投資であるため、導入によって発生するコストと、その結果として得られる業務効率化・売上拡大の効果を比較し、「いつから黒字化するか=損益分岐点」を明確にする必要があります。BtoB取引に特有の要素も踏まえ、以下の観点で検討を進めましょう。

現状業務コストの棚卸し

まず重要なのは、現在どの業務にどれだけの時間・人手がかかっているかを定量的に把握することです。

  • 業務単位(例:注文受付、内容確認、在庫確認、返信、出荷手配)で分解
  • 各業務の平均所要時間・関与者の人件費単価を算出
  • ミス対応や差し戻し、問い合わせ対応などの“隠れ工数”も考慮

この棚卸しができれば、「手作業での受注処理に月間○○万円かかっていた」という具体的なコストを算出できます。

導入コストの明確化

次に、ECカートシステム導入によって発生するコストを整理します。

  • 初期費用(設計・構築・デザイン・データ移行)
  • 月額利用料(SaaS型が主流)
  • 社内教育コスト(従業員向け研修)
  • システム保守・サポート費用

ベンダーによって費用構成が大きく異なるため、「月額費用が安くても初期費用が高額」「SaaS型でもオプションが割高」など、トータルコストで比較することが肝要です。

効果試算と損益分岐点シミュレーション

導入によってどのようなコスト削減・利益増が期待できるかを、できるだけ定量的に見積もりましょう。

  • 人件費削減(工数×人件費)
  • ミス削減による再作業・クレーム対応の減少
  • 営業対応時間の創出(受注業務が減ることで新規営業に注力できる)
  • 売上増(非対面での新規注文獲得、継続率の向上)

たとえば、導入により月20時間の受注業務が削減でき、時給2,000円換算で月4万円の削減が見込めるなら、月額3万円のカートシステムであれば初月から損益分岐点を超えます。さらに、LTV(顧客生涯価値)が高まる構造であれば、長期的な利益にも直結します。

BtoBにおいて重要な定性効果

損益分岐点の判断では、短期的なコスト削減に加え、BtoBならではの定性効果を重視すべきです。特に以下のような効果は、金額換算は難しいものの、企業競争力の強化に直結します。

  • 顧客満足度の向上:24時間注文が可能になり、注文履歴や自動見積が利用できることで、発注担当者の業務負担を軽減。再注文や確認作業の手間も削減され、リピート率の向上にもつながります
  • 営業体制の高度化:EC経由で得られる購買データを活用することで、営業は「売る」から「提案する」活動へと進化できます。たとえば、購買傾向に応じたレコメンド提案、需要予測にもとづいた定期提案など、提案営業の武器が増えます
  • アフターセールス強化:ECサイトを通じたアフターサポート機能の充実により、顧客へのサービス向上が図れます。例えば、FAQ、チケット管理システム、製品サポートをオンラインで提供することで、顧客満足度の向上とリピーターの獲得につながります。また、アフターセールスが強化されることで、顧客の信頼を高め、長期的な関係構築が可能になります
  • 離職率の改善:FAX対応や電話確認、内容転記といった単純でストレスの多い業務が削減され、従業員の心理的負担が軽減されます。とくに若手社員の離職防止や、業務継続性の確保にも効果があります
  • 純正品の販売率向上とブランド保護正規のECチャネル経由での購入が促進されることで、転売品や模造品の流通を抑止できます。これによりブランド毀損を防ぎ、売上流出のリスクを軽減するという、副次的ですが重要な効果も期待できます

BtoB ECは、単なる“省力化ツール”ではなく、企業の組織・人材戦略にも寄与する「経営施策」として機能することができます。

>>機械業界におけるアフターセールス強化についてさらに詳しく知りたい方はこちら!
【機械業界向け】アフターセールス強化ガイド:ECサイト活用で顧客満足度と収益を向上

BtoBならではのECカート選定ポイント

BtoBの商習慣や業務フローはBtoCと大きく異なるため、カートシステムの選定にあたっても独自の観点が必要です。以下のポイントを確認しましょう。

よくある選定ポイント

【1. 会員制・契約単価対応】

BtoBでは、企業ごとに契約単価や支払条件が異なるケースが多いため、「会員ごとの価格設定」や「得意先別の商品表示」が柔軟に行えるかどうかが重要です。

【2. 見積・承認フローの有無】

注文前に見積作成が必要な企業も多いため、「自動見積」や「社内承認フロー対応」が可能か確認する必要があります。これにより、営業の作業負担が軽減され、見積から受注までのリードタイムが短縮されます。

【3. 複数出荷先・部署単位の発注対応】

1企業内でも複数の部署や拠点が存在する場合、発注者ごとに出荷先を切り替えられる機能、部署ごとの利用履歴管理などが必要です。

【4. CSV・EDI連携】

大手企業との取引では、CSVアップロードによる一括注文や、EDI連携によるデータ交換が求められることもあります。標準機能でこれに対応しているか、カスタマイズが必要か確認しましょう。

【5. オフライン業務との共存性】

完全にオンライン移行できない場合に備え、電話・FAX経由の注文も同一画面で登録・管理できる「ハイブリッド型運用」ができるシステムが望ましいです。

【6. 営業部門との連携】

営業担当者が顧客の代わりに注文入力できたり、提案商品をピックアップして顧客に通知できる機能など、営業支援機能も選定ポイントになります。

EC機能導入で変わる業務フロー

BtoBカートシステムを導入することで、日々の業務フローは大きく変わります。ここでは、従来の電話・FAX対応を前提とした業務と、カートシステム導入後の業務フローを比較し、どこに効率化・省力化のポイントがあるのかを整理します。

業務工程従来フロー(FAX・電話中心)カート導入後のフロー効果
受注電話・FAXで注文書を受領
担当者が内容を目視で確認・入力
顧客がWeb上で直接発注
自動でデータ化・管理画面に反映
入力ミス防止・対応スピード向上
在庫確認担当者がシステムや倉庫に確認し折返し連絡在庫状況をカート上にリアルタイム表示顧客の待ち時間削減・対応負担軽減
見積対応担当者が都度作成・メールやFAXで送付顧客がマイページから自動見積取得作業負荷軽減・対応の平準化
発注承認社内で紙ベースやメールで回覧・承認アカウントごとに承認権限設定・Web上で完結社内フローの明確化・スピード化
請求・支払い請求書を手作業で発行・郵送取引データから自動請求書作成・PDF送付も可能発行ミス削減・郵送コスト削減
受注データの社内展開担当者が手入力で基幹システムに転記CSV出力やAPI連携で自動連携二重入力の排除・業務スピード向上

このように、ECカートシステムは単なる注文受付の手段ではなく、受注・見積・承認・請求・管理の一連の業務を一気通貫で効率化する「業務改革の起点」となります。特に、属人的な対応や手作業によるミスが多かった部分が仕組み化されることで、スケールする体制を構築しやすくなります。

代表的なBtoBカートシステム比較

■ クラウド型(SaaS)BtoBカートシステム

※中堅~大企業、比較的導入しやすく、スピード重視・月額課金モデル

  • アラジンEC
    BtoB特化。FAX注文と同等の画面設計や取引先別価格対応などが強み
    → 卸売・メーカーに多く導入実績あり
  • Bカート
    中小企業向けBtoB専用ECカートシステム。シンプル・低コストで始められる
    → 顧客ごとの価格表示、掛売対応など基本機能が豊富
  • EBISUMART BtoB
    EC構築PaaS「ebisumart」のBtoB版。柔軟な拡張性が魅力。
    → 要件が複雑な企業に対応可能
  • TEMPOSTAR BtoB
    BtoC向け「TEMPOSTAR」のBtoB拡張。モール・基幹連携に強い。
    → 多チャネル展開や在庫一元管理が可能
  • Salesforce Commerce Cloud
    SalesforceのBtoB向けECシステム。CRMや営業支援機能との連携が強み
    → 複雑な取引管理や高度なデータ活用が必要な企業向け
    → AI活用やクロスチャネル対応、営業活動支援機能が豊富
  • 楽楽B2B
    中小企業向けのBtoB専用ECシステム。手軽に導入でき、管理機能が充実
    → 多通貨・多言語対応、顧客ごとの価格設定、見積対応も可能
    → 導入・運用コストが低く、比較的小規模な企業に適している

■ オープンソース/スクラッチ系(カスタマイズ性重視)

  • Magento(Adobe Commerce)
    オープンソース発祥のグローバルEC基盤。Adobe傘下で継続進化中
    → BtoB機能(顧客別価格・クイックオーダー・見積対応)も標準搭載
    → 海外展開・複数ブランド統合・複雑なロジックに強い
    → 高度なSIパートナーが必要なケースもあるため、中〜大規模向け
  • ecbeing BtoB
    大手向け。フルスクラッチレベルの拡張性と豊富な導入実績
    → 大企業・複雑な取引形態に対応。独自要件を反映可能
  • コマース21
    BtoB/BtoC両対応。SI寄りで、大規模・高機能志向の企業向け
    → 専門チームによるフルサポート体制あり

■ Shopifyなど汎用カートシステムのBtoB拡張活用型

Shopify + BtoBアプリ(Shopify B2B Suite等)
海外製ながら近年は国内でも導入が増加。
→ 拡張アプリで顧客グループ別価格・見積・掛売対応も可。
→ 複数店舗を持つD2C兼業企業向き

サービス名対象企業規模主な特長導入の容易さ価格帯推奨業種
アラジンEC中堅~大企業FAX注文同等の画面設計、取引先別価格対応、卸売・メーカー向け実績比較的容易中~高卸売・メーカー
Bカート中小企業シンプル・低コスト、顧客ごとの価格表示、掛売対応、基本機能豊富非常に容易低~中中小企業向けBtoB
EBISUMART BtoB中堅~大企業柔軟な拡張性、複雑な要件対応可能柔軟だがやや複雑中~高要件が複雑な企業
TEMPOSTAR BtoB中堅~大企業BtoC向けの多チャネル展開、基幹連携、在庫一元管理が強み中程度中~高多チャネル展開企業
Salesforce Commerce Cloud大企業CRM連携、AI活用、営業支援機能、複雑な取引管理高度なカスタマイズ必要大規模企業
楽楽B2B中小企業多通貨・多言語対応、顧客ごとの価格設定、見積対応、低コスト非常に容易中小企業向けBtoB
Magento (Adobe Commerce)大企業・グローバルBtoB機能標準搭載、複数ブランド統合、複雑なロジック対応、海外展開に強み高度なカスタマイズ必要グローバル展開・複雑な取引
ecbeing BtoB大企業フルスクラッチレベルの拡張性、複雑な取引形態に対応非常に柔軟大企業・複雑な取引形態
コマース21大企業SI寄り、大規模・高機能志向、フルサポート体制フルサポートだが導入は複雑大企業・高機能志向企業
Shopify + BtoBアプリ中堅~大企業拡張アプリで顧客グループ別価格、見積、掛売対応、D2C兼業企業向け比較的容易中~高D2C兼業企業

※システムの機能は変更となっている可能性があります

年商ごとのおすすめツール

BtoB ECカートシステムは、企業の規模や業務内容によって最適なサービスが異なります。
以下の代表的な4つのツールを、年商ごとにおすすめします。


1. 年商約1億円〜10億円の企業

  • Bカート
    • シンプルで低コストに導入可能
    • 顧客ごとの価格表示や掛売対応など、BtoBに必要な基本機能が揃っており、中小企業に最適
    • 初めてECサイトを導入する企業や、小規模で始めたい企業におすすめ
  • 楽楽B2B
    • シンプルかつ低コストで、多通貨・多言語対応も可能
    • 国内外に展開したい中小企業向けに適したECプラットフォーム。
    • 使いやすく、業務負担を軽減したい企業にぴったり。

2. 年商約10億円〜50億円の企業

  • アラジンEC
    • BtoB特化型で、FAX注文や取引先別価格対応が強み
    • 卸売業やメーカー向けの導入実績が豊富
    • 複雑な取引形態や業務フローをスムーズに管理できるため、中堅企業に最適
  • EBISUMART BtoB
    • 複雑な要件に対応できる柔軟性を持ち、拡張性が高い
    • 大手企業や成長を目指す中堅企業に最適
    • ビジネス規模の拡大に合わせて、ECサイトをスムーズに成長させられる

3. 年商約50億円〜500億円の企業

  • Magento (Adobe Commerce)
    • 高度なカスタマイズが可能で、海外展開や複数ブランドの統合に強い。
    • BtoB向けの機能(顧客別価格、クイックオーダー、見積もり機能)を標準搭載。
    • グローバル展開を目指す大企業や複雑なビジネス要件を持つ企業に最適。

Mageento(Adobe Commerce)についての詳しい解説(日本語)はこちら!
>>Magento(マジェント, Adobe Commerce)とは?ECプラットフォーム解説

おすすめの導入ステップ(業務棚卸 → 要件定義 → 比較)

自社の業務フローと必要機能の洗い出し

まずは現状の業務フローを整理しましょう。受発注や在庫管理など、現在どの業務にどれだけの手間がかかっているかを確認することが大切です。例えば、FAXや電話での注文受付や、手作業で行っている在庫管理など、改善の余地がある部分を明確にします。

次に、ECカートシステムに求める機能を洗い出します。例えば、顧客ごとの価格設定、見積対応、承認フローなど、BtoB特有のニーズに対応できる機能が必要です。

カートシステムの比較

自社の業務に合ったECカートを選定するためには、複数のサービスを比較することが重要です。カート比較表を作成し、機能(例:顧客ごとの価格設定、見積作成機能)、費用(初期費用、月額費用)、サポート(導入支援、保守サポートの内容)を整理しましょう。これにより、どのカートが自社の業務フローに最適かを見極めやすくなります。

無料トライアルやベンダーへのデモ依頼の活用法

多くのカートシステムでは無料トライアルやデモンストレーションを提供しています。これらを活用して実際の操作感や機能性を確認しましょう。とくに、システムを導入した後の運用イメージが湧きやすくなるため、可能であれば複数のベンダーにデモを依頼し、比較することをおすすめします。

まとめ:導入のタイミングを見誤らないために

ECツールの導入は、タイミングと準備が重要な要素です。早すぎても遅すぎても効果を最大化できないため、現状の課題や将来のビジョンをしっかりと見極めることが必要です。適切なタイミングで、慎重かつ計画的に導入を進めることが、成功への鍵となります。

導入の是非を損益分岐点でシンプルに判断

ECカートシステム導入を検討する際、最も重要なのは「損益分岐点」をしっかりと把握することです。導入によってかかるコストと、それによる効果を比較し、「いつから黒字化するか」を明確にします。BtoBの場合、業務効率化や売上拡大の具体的なシミュレーションを行い、導入のタイミングを見極めることが成功への鍵です。

BtoBならではの選定ポイントを押さえれば失敗は避けられる

BtoB ECの導入においては、特有のニーズを満たすことが重要です。会員別の価格設定や見積対応、複数の出荷先への対応など、BtoCとは異なる要件を満たすカートシステムを選ぶことがポイントです。これらの選定ポイントを押さえることで、導入後のトラブルを避け、スムーズな運用が可能となります。

DX・業務改革の第一歩としてのECカートシステム活用を推奨

ECカートシステム導入は単なる業務効率化にとどまらず、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)の第一歩として位置づけられます。受発注業務のオンライン化は、業務効率化のみならず、顧客満足度の向上や営業体制の強化にも寄与します。ECカートシステムを活用することで、今後の業務改革を加速させることができるでしょう。

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