こんにちは、BIZROVEです!
BtoBビジネスにおけるアフターセールスは、製品やサービスの販売後の支援活動を指し、顧客との長期的な関係を築くための重要な要素です。
とくに、機械や重工業の分野では、アフターセールスが売上の一部を大きく占めるだけでなく、顧客の満足度や再購入を促すためにも欠かせない要素となっています。
しかし、アフターセールスを強化することは一筋縄ではいきません。
今回は、機械の販売後に必要とされるメンテナンス、部品販売、修理、保守を中心に、アフターセールス強化に向けた課題とその解決策について考えていきます。
アフターセールスとは
アフターセールスとは、機械や設備などの製品を販売した後、顧客がその製品を長く安心して利用できるようサポートする活動のことです。具体的には、メンテナンス、部品の提供、修理、保守といったサービスが含まれます。
これは、顧客が購入した機械を安心して使い続け、生産活動に支障が出ないようにするために非常に重要です。もしアフターセールスが不十分だと、機械が故障した際に顧客が困ってしまい、企業への信頼を失う可能性があります。
一方で、充実したアフターセールスは、顧客との長期的な信頼関係を築くだけでなく、営業的な観点からも非常に重要です。
たとえば、定期的なメンテナンスの提案時に、より高性能な部品や関連製品を勧めるアップセルや、現在使用している機械と合わせて導入することでさらに効率が向上する別の製品を提案するクロスセルの機会が生まれます。
アフターセールスの例:
- 定期メンテナンス:定期的に行う点検や部品交換。例えば、オイル交換、フィルター清掃、ベルトの張り調整など
- 緊急修理
- 部品販売:純正部品の提供や、代替品、アップグレード部品の提案など、交換部品や消耗品などのタイムリーな提供
- 技術サポート:機械の操作方法、トラブルシューティング、技術的な問い合わせに対応するヘルプデスクやオンサイトサポート
- トレーニング:顧客のオペレーターやメンテナンス担当者に対して、機械の正しい操作方法や日常点検、簡単なメンテナンス方法などを指導する研修プログラムの提供
- ソフトウェアアップデート:機械に組み込まれた制御ソフトウェアや管理システムなどのアップデートを提供し、機能改善やセキュリティ強化を実施
- リモートモニタリング:IoT技術などを活用し、機械の稼働状況や異常を遠隔で監視し、故障の予兆を検知したり、遠隔での簡単なトラブルシューティングを実行
- 保証サービス:製品購入後の一定期間、無償で修理や部品交換を行う保証を提供
- オーバーホール:長期間使用された機械を分解し、洗浄、部品交換、再組み立てを行い、新品に近い状態に回復できるようなサービスの提供
- 技術コンサルティング:顧客の生産ラインや設備全体に関する課題に対し、専門的な知識や経験に基づいた改善提案やアドバイスを実施
顧客が製品に満足し、企業への信頼感が高まっている状況下では、それらの追加提案を受け入れてもらいやすくなります。質の高いアフターセールスを通じて顧客との良好な関係を維持することは、新たな収益機会の創出につながり、企業の成長に大きく貢献するのです。
つまり、アフターセールスは、単に製品を売るだけでなく、その後の顧客との関係を深め、長期的なビジネスチャンスを広げるための重要な戦略と言えるでしょう。
アフターセールス強化の必要性
アフターセールスが強化され、適切なメンテナンスと部品供給が行われれば、機械の稼働率が向上し、顧客満足度が高まります。最終的には、顧客が長期的に安定して機械を使用できる環境を提供することで、企業の収益性やブランド価値を高めることができるのです。
したがって、アフターセールスの強化は、機械を一度売っただけでは終わらないビジネスの成長戦略の一環として、今後ますます重要性を増していくでしょう。
アフターセールス強化のメリット
なかでも、以下の理由からアフターセールスの強化はビジネスにとって不可欠です。
- 機械のパフォーマンス向上:メンテナンスや部品交換を適切に行うことで、機械の稼働率を向上させることができ、顧客の生産活動に支障をきたさないようにします
- 顧客満足度と再購入促進:アフターセールスがしっかりしていると、顧客の満足度が向上し、再購入やリピート受注につながります
- 企業の収益向上:長期的に安定したサポートを提供することで、ブランド価値の向上や収益増加が期待できます
しかし、アフターセールスを強化することは容易ではありません。
とくに、機械や設備のメンテナンス、部品供給、修理などは高度な管理能力を要求し、効率化が求められます。
アフターセールスに期待できること―顧客目線
また、質の高いアフターセールスは、機械や設備を導入したお客様にとって、以下のような具体的なメリットをもたらします。
- 機械の安定稼働による安心感:導入した機械が常に最適な状態で稼働することで、お客様は安心して生産活動に集中できます。予期せぬトラブルによる生産ラインの停止といったリスクを最小限に抑えられます
- 計画的なメンテナンスによるコスト削減:定期的なメンテナンスや予知保全を通じて、突発的な故障やそれに伴う高額な修理費用を回避できます。計画的な部品交換などは、予算管理を容易にし、長期的なコスト削減に繋がります
- ダウンタイム(稼働停止時間)の最小化による生産性向上:機械の停止時間が短縮されることで、お客様の生産効率が向上し、納期遅延のリスクを減らすことができます。これは、ビジネスチャンスの損失を防ぎ、収益の最大化に貢献します
- 専門的なサポートによる課題解決:機械の操作方法に関する疑問や、万が一のトラブル発生時にも、専門的な知識を持った担当者から迅速かつ的確なサポートを受けることができます。これにより、お客様自身で問題を解決する手間や時間を省き、本来の業務に集中できます
- 最新技術や情報による価値向上:ソフトウェアのアップデートや、より効率的な運用方法、新しい関連製品の情報などを提供してもらうことで、お客様は常に最新の技術を活用し、設備の価値を最大限に引き出すことができます
このように、手厚いアフターセールスは、お客様が機械を導入した後も安心してビジネスを展開できる環境を提供し、長期的な視点での利益に貢献する重要な要素となるのです。
アフターセールスの注目すべき機能
適正在庫管理による即納率向上
アフターセールスで最も重要な要素のひとつは、部品の供給です。適切な在庫管理が行われていない場合、必要な部品が手に入らず、修理やメンテナンスが遅れ、ダウンタイムが長くなります。これを避けるために、適正在庫管理を行い、部品をタイムリーに提供できる体制を整えることが求められます。
とくに、製造業や重工業などでは、機械が稼働していない時間がコストに直結します。そのため、在庫が不足していると、修理やメンテナンスが遅れ、顧客に多大な損失を与えることになります。適正在庫を維持することで、即納率を高め、必要な部品をすぐに提供できる体制を構築することが可能となります。
適正価格の設定
部品やサービスを提供する際、適正価格を設定することも重要です。顧客は価格が高すぎると感じると、他の業者に乗り換えることがありますが、逆に価格が低すぎても品質に対する信頼を失ってしまう恐れがあります。そのため、価格競争だけでなく、顧客が納得できる価格設定が求められます。
昨今では、正規部品の入手が困難な状況において、非正規出品(転売)を利用するユーザーが増加し、価格が高騰してしまう懸念もあります。このような状況下では、適正な価格設定が一層重要となります。
部品ネット販売(BtoB)
昨今、オンライン販売の需要が増加しており、部品のネット販売(EC販売)もその一環として注目されています。とくに、顧客が自ら必要な部品を選んで購入できるオンラインプラットフォームは、顧客の利便性を大きく向上させます。
これにより、顧客は自社の在庫管理や修理のスケジュールを自分で調整することが可能となり、購入から納品までのリードタイムを短縮することができます。さらに、オンラインプラットフォームでは部品の種類や仕様、価格を一覧で確認できるため、選択肢が増え、顧客にとっての利便性が向上します。
BtoB(製造業)ECサイト導入事例はこちら>>
Magento導入企業インタビュー|ヤンマー建機様[グローバル展開を見据えたBtoB ECサイト]
※弊社グループ会社 Digital-Free株式会社のサイトに移行します
IoTによる機械本体との連携(サブスクリプションモデル)
IoT(Internet of Things)技術を活用することで、機械の運転状況や部品の劣化状況といったデータをネットワーク上で管理することが可能になります。 この仕組みを導入することで、機械の稼働状況をリアルタイムに把握し、故障の予兆を早期に捉えることができるようになります。
さらに、これらのデータをアフターセールスと連携させることで、従来の事後対応型から、事前に異常を予測して対応する予知保全へと移行できます。 これにより、顧客の機械が停止する前にメンテナンスや部品交換を提案できるため、ダウンタイムを最小限に抑え、顧客満足度向上に貢献します。また、機械のサブスクリプションモデルと組み合わせることで、定期的なメンテナンスや部品交換を契約に含めることができ、顧客の手間を大幅に削減できます。
このように、IoT技術を導入し、機械の状態データを収集・活用することで、アフターセールスはより効率的かつ効果的に運用できるようになり、顧客との長期的な信頼関係を構築することが可能になります。
アフターセールスを強化すべき企業
とくに、以下のような課題を抱える企業においては、アフターセールスの強化が急務と言えるでしょう。
部品の受注管理が煩雑化している企業
機械本体の種類、オプション、販売台数、そして多岐にわたる部品品番が複雑に絡み合い、部品の特定や手配に時間を要している場合。
部品の受注状況をリアルタイムに把握できていない企業
顧客からの部品注文が適切に処理されているか、進捗状況が不明瞭で、顧客への迅速な情報提供が難しい状況にある場合。
部品の在庫管理が最適化されていない企業
必要な部品が不足して納期遅延を引き起こしたり、過剰な在庫を抱えてコストが増加したりするなど、効率的な在庫管理ができていない場合。
過去の販売履歴の活用が不十分な企業
どの機械にどのようなオプションが搭載され、いつ、どれくらいの部品が販売されたかの履歴が整理されておらず、顧客への的確な提案やサポートに活かせていない場合。
ベテラン管理担当者の高齢化が進んでいる企業
長年の経験を持つ担当者に依存した管理体制であり、そのノウハウが形式知化されておらず、担当者の退職や異動によって業務ナレッジが失われるリスクがある場合。
これらの課題が複合的に存在する場合、受注処理の失念による顧客への部品供給遅延や、在庫不足による機械のダウンタイム長期化といった問題が発生しやすくなります。これは顧客満足度を著しく低下させるだけでなく、企業の信頼失墜や将来的なビジネス機会の損失に繋がりかねません。
したがって、上記のような状況にある企業は、早急にアフターセールスの体制を見直し、デジタルツールの導入や業務プロセスの標準化などを通じて、その強化を図るべきと言えるでしょう。
アフターセールスを強化するには?具体例を元に解説
では、アフターセールスを強化するにはどの様にすればよいのか、機械メーカーを例に、具体的な取り組みの流れをご紹介します。
検討の経緯
課題:
・部品の種類や在庫状況が担当者ごとの経験に依存しており、全体像の把握が困難
・顧客からの部品注文経路が複数存在し、管理が煩雑
・機械本体と部品の販売データが分断されており、顧客のニーズに合わせた提案が難しい
・営業担当者が顧客の機械の状況や部品情報をタイムリーに把握できていない
アフターセールス強化の目的:
・顧客満足度の向上と業務効率化
解決策:基幹システムと連結可能なBtoB向けECサイトの導入
課題を解決するためには、基幹システムと連携可能なBtoB向けECサイトの導入が有効でした。
詳細な営業データや複雑かつ膨大な商品データ(機械の部品)、国外のクライアント情報など多種多様なデータを連携させ、社外向け・社内向けに可視化させる必要がありました。
以下に、実現に向けた具体的な施策をまとめます。
流れ
プロジェクト開始(X年): アフターセールスにおける顧客対応の遅延や部品管理の煩雑さといった課題が顕在化し、その強化に向けた検討プロジェクトがスタートしました。
部品在庫管理システムの導入(X+2年): 部品の在庫状況が担当者の経験に依存しており、全体像の把握が困難であったため、部品在庫管理システムを導入しました。これにより、「なんとなく」 の管理から脱却し、在庫状況の可視化と適正化を図ることを目指しました。
BtoB ECサイトの試験的導入(X+3年): 将来的な顧客の利便性向上を見据え、顧客自身がオンラインで部品を注文できるBtoB ECサイトを試験的に導入しました。この段階では、単に部品を販売するだけでなく、将来的には顧客が使用している機械の情報と連携し、適切なタイミングで交換が必要な部品を提案することを視野に入れていました。しかし、専門的な販売スキルを持たない担当者による運用方法についても検討が必要でした。
営業支援システムの導入(X+6年): 部品販売だけでなく、機械本体の販売強化と顧客との長期的な関係構築を目指し、顧客情報、機械情報、部品情報などを一元管理できる営業支援システムを導入しました。システム導入にあたっては、以下のようないくつかの課題に直面しましたが、段階的なアプローチで解決を目指しました。
導入の結果
- 自社メリット: 部品注文データを詳細に把握できるようになったことで、どの号機のどの部品がいつ、どれくらいのリードタイムで出荷されたかといった情報を分析し、ボトルネックの改善やアフターセールスの強化に繋げています。システム画面上で配送状況も確認できるようになったことも業務効率化に貢献しています。
- 顧客メリット: BtoB ECサイトを通じて、必要な部品を容易に注文でき、透明性の高い情報提供が可能になりました。
アフターセールス強化をするための施策まとめ
データの一元化と活用基盤の構築
詳細な商品マスタの整備とECサイト連携
煩雑な部品リストを整理し、機械本体、オプション、消耗品、メンテナンス部品などを区別した詳細な商品マスタを構築します。この細分化されたデータは、基幹システムと連携したBtoB ECサイトに反映され、顧客が最適な部品を容易に検索・特定できるようになります。また、売上分析に必要な粒度でのデータ把握を可能にし、アップセル・クロスセルの機会創出にも繋げます。
段階的な基幹システムとの連携
販売管理、在庫管理などの基幹システムとBtoB ECサイト、そして営業支援システムを、まずは双方向のバッチ連携から開始します。完璧なリアルタイム連携に固執せず、業務に必要な範囲から連携を進め、商品画像などのデータも段階的に追加していくことで、スムーズな導入と運用を目指します。
複雑な商流に対応した情報管理
機械本体と部品の複雑な商流を営業支援システム上で明確化し、関連部門間での情報共有を円滑にします。BtoB ECサイトは、まずは直販ルートから運用を開始し、顧客からのフィードバックや運用状況を踏まえ、他の販売ルートへの展開を検討することで、リスクを抑えた導入を進めます。
顧客・機械・部品情報の統合管理とECサイト連携
顧客管理システムを活用し、顧客情報、導入した機械の情報、保守履歴、部品購入履歴、修理履歴などを一元的に管理し、BtoB ECサイトと連携させます。これにより、顧客はECサイト上で自身の機械に適合する部品を容易に確認・注文でき、最適な部品選択を支援します。
デジタルチャネルによる顧客体験の向上
顧客メリットを明確にしたBtoB ECサイトの提供
顧客が最適な部品を簡単に検索・注文でき、出荷状況や伝票番号もリアルタイムに確認可能となる、利便性の高いBtoB ECサイトを提供します。これにより、顧客は必要な部品を迅速かつ効率的に調達でき、社内での確認作業や問い合わせの手間を大幅に削減できます。
営業支援システムによる顧客対応の強化
顧客情報を一元管理し、過去の取引履歴や問い合わせ履歴などを容易に参照することで、よりパーソナライズされた提案やサポートを実現します。
部品注文データを詳細に把握し、どの号機のどの部品がいつ、どれくらいのリードタイムで出荷されたかといった情報を分析することで、ボトルネックの改善や顧客への迅速な情報提供に繋げます。
ECサイト画面上からの配送状況確認により、顧客からの問い合わせ対応時間を削減し、顧客満足度向上に貢献します。
組織体制と業務プロセスの最適化
部門間の連携強化と、ECサイトや基幹システム、営業支援システムを通じたスムーズな情報共有を実現します。
また、ナレッジマネジメントを推進し、顧客対応の標準化と効率化を図ります。
ECサイトの導入・運用を踏まえ、顧客視点での業務プロセスを再設計することも重要です。
将来を見据えたデータ活用
ECサイトや営業支援システムに蓄積されたデータを分析し、売れ筋部品の特定、需要予測、顧客ニーズの把握に活用します。
将来的には、IoT技術と連携することで、予知保全の実現や、より効率的なアフターセールスへと進化させることを検討します。
これらの施策を段階的に実施していくことで、企業はアフターセールス体制を強化し、業務効率を大幅に改善するとともに、顧客満足度を向上させ、持続的な成長へと繋げることができます。とくに、基幹システムと連携したBtoB ECサイトの導入は、顧客と企業の双方にとって大きなメリットをもたらす重要な施策と言えるでしょう。
まとめ
アフターセールス強化のためには、基幹システムと連携可能なBtoB向けECサイトの導入が効果的です。これにより、部品管理や受注管理がリアルタイムで行われ、顧客満足度の向上が期待できます。さらに、業務の効率化や商流の簡素化により、競争力を強化できるでしょう。
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