こんにちは、BIZROVEです!
ヘアアイテムブランド「agetuya」へのインタビュー企画、今回はEC戦略編をお届けします。前編では、誕生当初から現在に至るまでの商品販売戦略について深掘りしました。
後編となる今回は、EC販売、とくに2024年に行った自社ECサイトのリニューアルに焦点を当て、お話を伺います。
低価格ながら高品質なヘアアイロンで若い世代を中心に絶大な支持を集める「agetuya」。その躍進を支えるEC戦略とは?
自社ECサイトリニューアルの経緯
粗利率改善を目指して自社ECサイトをリニューアル
ACROVE:2024年に自社ECサイトをリニューアルされましたよね。その際は弊社が支援させていただきました。
オフライン販売やECモールが主力となるなかで、昨年、自社ECサイトをリニューアルしたのはなぜでしょうか?
輪湖氏:自社ECサイトを強化しなくてはいけないフェーズになったと判断したためです。自社ECサイト自体は以前から構えていたのですが、売上がある程度伸びてきた段階に差し掛かり、より粗利率を上げるためにはと考えた結果が自社ECサイトの強化としてリニューアルでした。

ローネ公式オンラインストア
ACROVE:ある程度売上が伸びてくると、ECモールは手数料がネックになることが多いとよく聞きます。
輪湖氏:ECモールは、売上を上げるためにはセールへの参加や割引施策が必要となることが多く、また、手数料も高いため、直接の利益を得るのが難しくなっていました。
そのため、自社ECサイトの開設は、ECモールでの粗利率の限界を突破し、より直接的に顧客とつながるための重要なステップでした。
内製化を目指してカートシステムをリプレイス
輪湖氏:リニューアルで重視したのは、「手数料が安い」、「カスタマイズが簡単」、「決済方法の多様性」、「簡単なレイアウト変更」など、運営面の利便性にあります。そのため、ノーコードで操作でき、シンプルな機能性で集客と運用を進められ、販促まで社内で完結できる点が魅力なShopifyを選びました。

Shopify標準のカスタマイザー(設定画面)
標準画面でノーコードでページ更新ができる
長期的な利益率や販売管理費を考えると、サイトの編集やアップデートのたびにサイト構築ベンダーに外注するわけにはいかないので、簡単に設定・編集ながらも、ある程度の機能やデザインのカスタマイズができるという点が重要でした。
ACROVE:実際に1年使ってみて、リニューアル前に使っていたカートシステムと比較してどうですか?
輪湖氏:以前のシステムは全てコードで操作しなければならず、自分たちでは手を付けることさえもできませんでした。
アフィリエイトやギフティング、広告用のLP(ランディングページ)をつくる機会が多いため、簡単にLPを作れるShopifyは非常に助かっています。

Shopify標準のカスタマイザーでのLP作成用画面
標準でも簡単にLPを作れるが、
agetuyaではさら機能性が高い「Shogun」という拡張アプリを入れている
ACROVE:自社ECサイトは、サイトを作っただけで終わるのではなく、売上をつくるためには広告・集客施策との連携が必須となりますが、Shopifyに乗り換えたことで、ようやく”販促まで社内で”というスタートラインに立てたわけですね。
自社ECサイトリニューアル後の苦悩
ACROVE:実際にリニューアルしてみて、その後はいかがですか?
輪湖氏:正直、最初は苦戦している部分もあったのが現状です。
自社ECサイトは、ECモール以上に集客が大変です。立ち上げ初期は、赤字前提で広告やアフィリエイトなどの集客施策を行わなくてはいけませんでした。
ACROVE:赤字だったのですか…。
輪湖氏:そうなんです。赤字前提で進めていくのは、最短での黒字転換を求められる会社の状況的には非常に厳しかったです。
そのため、agetuyaのように一度買ったらしばらく再購入されない商品の場合は、どうしてもすでに売上基盤が出来上がっているECモールの方が売上や利益を確保しやすいです。
ACROVE:自社ECサイトは、まずは売り場として育てていく期間が必要なのですね。
輪湖氏:agetuyaはECモールでの基盤が出来上がっていた分、顕著にその差を感じたのかもしれません。
agetuyaよりも単価が低く購入されやすいアパレル雑貨の商品もあるのですが、そちらは自社ECサイトの売上比率も好調です。
そのため、agetuyaの自社ECサイトの使い方としては、他商品を購入者したお客様に対して商品案内を送って購入していただく、いわゆるクロスセルが狙いとなっています。
1つの施策に対し、年間で数億規模の広告予算を割いている競合に太刀打ちするのは、一筋縄ではいきません。

Shopifyの分析画面:リピーター分析

Shopifyの分析画面:管理画面で一元確認できる、細かなレポーティング機能

Shopifyの分析画面:クーポンごとの利用回数や詳細データ
ACROVE:顧客情報を柔軟に活用できる自社ECサイトだからこそ、たとえメイン販路にならなかったとしてもマーケティングやコミュニケーション基盤として機能させることができるのですね。
自社ECサイトは失敗だったのか?
ACROVE:自社ECサイトは集客ハードルがあったり、売上比率も高くないとのことでしたが、リニューアルをどのように振り返っているのでしょうか?
輪湖氏:自社ECサイトの主な目的は、売り場というよりも、事業の基盤として位置付けています。
そのため、まずは事業基盤とできるよう、自社ECサイトとECモールとの連携は重要な戦略となっています。
ECモールで積み上げたレビューや実績は、ECサイトへの誘導にも大きな役割を果たし、信頼性を高めるために活用しています。とくに、レビューを資産として活用することがローネの戦略の鍵となっており、ECモール内での認知を広げつつ、自社ECサイトでのコアファン層の創出を目指しています。
ACROVE:ECモールの強みは、短期間での販売と購入者の即時性ですが、自社ECサイトでは、より長期的な顧客との関係構築を意識したマーケティングを行うようにしているのですね。
ただ、集客や商品購入後の関係強化には時間がかかるため、これを長期的に支えるための戦略が必要なのではないでしょうか?
輪湖氏:ECモールと自社ECサイト、それぞれに合わせたデジタルマーケティング戦略を展開しています。とくに、自社ECサイトでは、アフィリエイトやSNSを活用した集客施策に力を入れています。
また、LINE登録を促進する施策や、クーポン配布を通じて、顧客のリピートを促進する施策も積極的に実施しています。
さらに、新商品やキャンペーンの際には、アフィリエイトやインフルエンサーとの協力を強化し、外部流入を狙っています。
ACROVE:新商品発売のスパンが短いのはそういった理由もあるのですね。
マーケテイング施策の受け皿としての使い方以外に、自社ECサイト自体が機能して果たしている役割はありますか?
輪湖氏:自社ECサイト事業基盤とお話ししましたが、テストマーケティングの場として機能していることが最大の役割です。
新商品の開発や既存商品の改良には、お客様の声が欠かせません。SNSでのレビュー調査や店舗調査でもわかるものはありますが、お客様たちから直接レビューをいただくということは叶いません。
かねてよりユーザーインタビューを行いたかったのですが、ECモールだけで販売していた頃はECモール内で収集できるデータが少なく、インタビューを実施できませんでした。
しかし、自社ECサイトではお客様の情報がわかり、こちら側から直接アプローチをすることができるためユーザーインタビューが実施できるようになりました。

レビュー管理画面(judge.meというアプリ使用中)
ACROVE:なるほど、自社ECサイトは目安箱のような使い方もできるのですね。
輪湖氏:ユーザーインタビューやレビューを通じて、新商品の開発に活かせるデータを収集することが可能となり、事業にとっては大きなインパクトがあります。
自社ECサイトは、より深い購買ファネルのユーザーとのコミュニケーションの起点となり、ブランドを育てていく土壌になっています。
今後の展望
ACROVE:目まぐるしい速さでブランドのアップデートを行っているローネですが、今後はどのようなことを計画しているのでしょうか?
輪湖氏:今後の展望は、自社ECサイトをさらに強化し、リピート商品の増加を目指していくことです。
新商品も4つほど予定しているのですが、コードレスアイロンやポーチ、バッテリーなどのサブアイテムを自社ECサイトを中心に展開していく予定です。既存商品との価格帯が異なるため、新しい層にもアプローチできると考えています。
また、agetuyaブランドのリブランディングを進め、店頭とECサイトの共通したブランドイメージを確立していく予定です。ECとオフラインの両方でブランドの世界観を強化し、ブランドファン顧客との関係など長期的な成長を目指していきます。

ブランドの世界観の表現には自社ECサイトは欠かせないため、自社ECサイトはブランドの核として今後も重要な役割を果たしていきます。
引き続き集客体力やマーケティング施策の強化が求められる場面は多いでしょうが、それでも、自社ECサイトはECモールの枠を超えて独自のEC戦略を確立し、ブランドの成長を加速させるため欠かせない販路です。
まとめ
agetuyaは、ECモールの手数料や粗利率の課題を解決するため、Shopifyで自社ECサイトをリニューアルしました。内製化やデータ活用を進める一方で、集客には苦戦部分もあり、ECモールとの連携が重要になっています。
Shopify導入による顧客の声を活かした商品開発、そしてECモールとの連携による相乗効果で、agetuyaはさらなる成長を遂げるでしょう。
自社ECサイトを構築し、ブランド成長を加速させたいとお考えの企業様は、ぜひACROVEにご相談ください!
agetuyaの具体的なサイト構築の際のポイント、集客施策(LINE、アフィリエイト)内容については、こちらのホワイトペーパーで解説してます!
こちらもぜひ併せてご覧くださいませ。