こんにちは、BIZROVEです!
近年、ウェブサイトにアクセスすると「このサイトはCookieを使用しています」といったバナーが表示されるのを目にする機会が増えましたよね。
これは、Cookieの利用についてユーザーに通知し、同意を得るためのものです。
ECサイトにおいても、Cookieは顧客の行動履歴や購入履歴などを把握し、パーソナライズされたサービスを提供するために重要な役割を果たしています。
しかし、Cookieの利用には、個人情報保護の観点から注意が必要です。
今回は、自社ECサイトにCookieの同意バナーが必要かどうかについて解説していきます。
1. Cookieとは?
Cookieとは、ウェブサイトにアクセスした際に、ユーザーのブラウザに保存される小さなテキストファイルのことです。
Cookieには、ログイン情報、閲覧履歴、ショッピングカートの中身など、様々な情報が記録されます。
ECサイトでは、Cookieを利用することで、
・ユーザーの好みや行動に合わせた商品や広告を表示
・ショッピングカートの中身を保存
・サイトのアクセス状況を分析
といったことが可能になります。
2. なぜ自社ECサイトにCookie同意バナーが必要なのか
Cookieの利用は、ユーザーのプライバシーに関わる情報を取り扱うため、個人情報保護法の規制対象となります。
2022年4月に改正された個人情報保護法では、Cookieなどの情報は「個人関連情報」として位置付けられ、その取得と利用には、ユーザーへの適切な情報提供と同意取得が義務付けられました。
「個人情報保護法」を分かりやすく解説。個人情報の取扱いルールとは? – 内閣府大臣官房政府広報室: https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201703/1.html
Cookieと個人情報(名前、電話番号、住所、生年月日など)を紐づけている場合、個人情報保護法の規制対象となるため対応が必要です。
EC事業者がCookieと個人情報を紐づけているケースは、顧客体験の向上やマーケティング施策の効果を高めるために、様々な場面で見られます。主な例として、以下のようなケースが挙げられます。
自社ECサイトにおけるCookieの役割
- カスタマイズされた商品提案
ECサイトで商品を閲覧した履歴をCookieに記録し、その情報と顧客の会員情報(氏名、年齢、性別、購入履歴など)を紐づけることで、顧客の興味関心に基づいた商品をリコメンドすることができます。
例えば、過去にレディースファッションを閲覧した顧客に、新着のレディースアイテムやセール情報をメールマガジンで配信したり、サイト上でおすすめ商品として表示するといったことが可能です。
- ターゲティング広告
ECサイトで商品を閲覧した履歴や購入履歴をCookieに記録し、その情報と顧客の個人情報を紐づけることで、より効果的なターゲティング広告を配信することができます。
例えば、過去にベビー用品を購入した顧客に、育児関連の商品広告を表示するといったことが可能です。
- カゴ落ち対策
ショッピングカートに入れた商品を、購入せずにサイトを離れてしまった顧客(カゴ落ち)に対して、リマインダーメールを送信する際に、Cookieに保存されたカート情報と顧客の個人情報を紐づけることで、顧客の名前を呼びかけたり、カートに入れた商品を表示するなど、パーソナライズされたメールを送信することができます。
- パーソナライズされたコンテンツ配信
顧客のサイト閲覧履歴や購入履歴をCookieに記録し、その情報と顧客の個人情報を紐づけることで、顧客の興味関心に合わせたコンテンツを配信することができます。
例えば、過去に健康食品を購入した顧客に、健康に関するブログ記事やレシピを紹介するメールマガジンを配信するといったことが可能です。
- 顧客対応の効率化
顧客からの問い合わせに対応する際に、Cookieに記録された顧客のサイト閲覧履歴や購入履歴を、顧客情報と紐づけることで、過去の問い合わせ内容や購入状況を把握し、よりスムーズで的確な対応をすることができます。
これらの例のように、Cookieと個人情報を紐づけいている場合、同意バナーを設置した方がよいでしょう。同意バナーを表示することで、
・ウェブサイトがCookieを使用していることをユーザーに通知
・Cookieの利用目的を明確化
・ユーザーにCookieの利用を許諾するかどうかの選択権を与える
ことができます。
Cookieの取り扱いに関しては、個人情報保護法以外にも、電気通信事業法が関連する可能性があります。
電気通信事業法は、電気通信事業者に対し、Cookieを含む通信の秘密の保護を求めています。ECサイト運営者が電気通信事業法の規制対象となるケースは限られますが、例えば、ECサイトで顧客との間で機密性の高い通信を行う場合などが該当することが考えられ、電気通信事業法に違反した場合、刑事罰(懲役や罰金)が科せられる可能性があります。
電気通信事業における個人情報等の保護に関するガイドライン – 個人情報保護委員会及び総務省: https://www.soumu.go.jp/main_content/000934677.pdf
3. Cookie同意バナーを設置しないとどうなる?
Cookieの同意バナーを設置せず、ユーザーの同意を得ずにCookieを取得した場合、個人情報保護法違反となる可能性があります。違反した場合には、個人情報保護委員会から勧告や命令を受けたり、罰金が科される可能性もあります。
現時点(2025年1月)では、Cookieの管理が原因で刑事罰が科せられた事例は公表されていませんが、Cookieの取り扱いには十分な注意が必要です。今後、個人情報保護法の施行状況や社会情勢の変化によって、Cookieの取り扱いに関する規制が強化される可能性も考えられます。
また、法律的には違反とみなされなかったとしても、ユーザーのプライバシーを軽視しているとみなされ、企業の信頼を失墜させてしまう可能性もあります。
2024年7月、GoogleがChromeブラウザにおける3rd Party Cookieの廃止するとしていた方針を撤回することが話題になりました。しかし、Googleの3rd Party Cookie廃止の動向に関わらず、自社ECサイトでCookieを利用する場合には、ユーザーの同意を得る必要があります。これは、個人情報保護法などの法規制によって定められているため、Cookie同意バナーの設置は依然として重要な対策です。
4. 自社ECサイトにおけるCookie同意バナーの設置方法
Cookieの同意バナーを設置するにあたり、まずはその前にCookieの利用目的を明確にする必要があります。
どのような目的でCookieを取得・利用するのかを、プライバシーポリシーなどに明記しましょう。
では、その上でCookieの同意バナーを設置する方法は、どのようなものがあるのでしょうか?
①同意バナーを自作する場合
HTML、CSS、JavaScriptを使って、サイトに直接バナーを埋め込む方法です。
自分でコーディングする必要があるため、ある程度のWebサイト制作の知識が必要となります。
また、Cookieの同意状況の管理や詳細設定なども自身で行う必要があります。
②同意管理ツール(CMP)を導入する場合
CMP(Consent Management Platform)と呼ばれるツールを使って、Cookieの同意バナーの表示や同意状況の管理を行う方法です。
Cookieの種類に応じた同意の取得や、ユーザーごとの同意設定の保存などが可能です。
同意バナーを設置する | 同意管理ツールを導入する | |
メリット | ・実装が容易 ・カスタマイズ性が高い ・コストが低い | ・Cookieの種類に応じた同意管理が可能 ・ユーザーごとの同意設定を保存可能 |
デメリット | ・同意状況の管理が煩雑 ・詳細設定が難しい | ・ツール利用料がかかる |
自社ECサイトにおけるCookie同意バナー設置の注意点
サイト設定で同意バナーを設置するのか、同意管理ツール(CMP)を導入するべきか、判断に困る事業者様も多いでしょう。
本来であれば、CMPを入れて徹底的に管理するのが理想的かつ法令遵守という点においては正しいです。
しかし、実際にCookieの同意取得に関して罰金を求められたケースは今のところ少なく、CMPの導入・運用には費用もかかるため、特に中小規模の事業者様にとってはどこまで踏み切るべきか迷うところかと思います。
越境ECなどで、EU域内の居住者やカリフォルニア州在住の消費者の情報を取り扱っている場合は、日本の個人情報保護法よりもCookieの取り扱いに関して厳格なルールを設けているGDPRやCCPAなどの法律の対象となる可能性が高いため、CMPを導入するのがベターだと思います。
一方、国内向けのECサイトのみを運営している事業者様の場合、まずは同意バナーの設置から始めるのが現実的な選択肢かもしれません。ただし、Cookieの利用状況を把握し、利用者に適切な情報提供を行うなど、個人情報保護法に沿った対応は必須です。
どちらを選ぶにしても、Cookieの利用目的や取得する情報の種類、利用者の権利などを明確にし、プライバシーポリシーに記載することが重要です。また、今後の法改正や規制強化に備え、常に最新の情報を収集し、適切な対応を取れるようにしておくことが大切です。
まとめ
Cookieの同意バナーは、改正個人情報保護法への対応だけでなく、顧客の信頼獲得のためにも必要なものです。まだ設置していない場合は、早急に設置することをおすすめします。
ECカートシステムのShopifyなら、標準機能でCookieの同意バナーが設置できます。CSSでデザイン調整もできますし、ノーコードで自由にバナーを作りたい場合は、多種多様な拡張アプリから選ぶこともできます。
もし、ECサイトにおいて、Cookieの同意バナーの設置方法や管理方法についてお困りのことがあれば、ぜひACROVEにご相談ください。
ECサイトの構築・運用に関する豊富な知識と経験を持つ専門家が、あなたの課題解決をサポートいたします。