こんにちは、BIZROVEの高橋です!
売上アップに向けた新規施策としてセット販売を企画したものの、「抱き合わせ販売に該当すると違法である」という情報を知ってしまって不安になったことはありませんか?
また、多数の事業者が商品を組み合わせて販売しているため「組み合わせて販売することは違法性はない」と思いがちですが、実はこれが大きな落とし穴。
一定条件を満たすと商品を組み合わせて販売することは違法行為とみなされます。
この記事では、自社商品を組み合わせて販売することを企画した担当者向けに「抱き合わせ販売」について解説します。抱き合わせ販売は独占禁止法に抵触する行為です。しっかりと理解しておきましょう。
1.抱き合わせ販売の定義・罰則
抱き合わせ販売とは、多くの人に需要がある購買率の高い「人気商品」と売れ行きが芳しくない「不人気商品」をセットにして販売する行為を指します。
人気商品と不人気商品を組み合わせて販売した場合、ユーザーは人気商品を購入するために不人気商品も購入する必要があります。
一方で、販売者にとっては不人気商品の販売率を高めることができ非常にメリットが大きいです。しかし、消費者にとって不利益となるため消費者保護の観点から違反であるとされています。
具体的に抱き合わせ販売は「不公正な取引方法」として指定されており、独占禁止法第19条の違反となります。独占禁止法の条文では「相手方に対し、不当に、商品又は役務の供給に併せて他の商品又は役務を自己又は自己の指定する事業者から購入させること」と定義されており、消費者が本来購入する必要のない商品を仕方なく購入することになり、適正かつ自由な商品選択ができなくなる点が違法とされています。
抱き合わせ販売とみなされた場合は、公正取引委員会から「当該行為の差し止め」「契約条項の削除」「その他、当該行為を排除するために必要な措置」が命じられ、場合によっては「課徴金」の納付を命じられ、該当する販売によって得た売上げの数%を国庫に納めなければならなくなります。
2.抱き合わせ販売の事例紹介
ここからは具体的な事例を用いて抱き合わせ販売について解説していきます。まずは2つ以上の商品をまとめて販売していますが、抱き合わせ販売としてみなされなかった(違法にならなかった)事例を紹介します。
違法にならなかった事例
組み合わせる商品や役務が密接にかかわっている場合は抱き合わせ販売に該当しません。
- レンタカー向け保険を単品販売せずレンタカーの貸与と共に販売する
(保険のみ買うことができないが、レンタカーを保険無しで契約できる) - 太鼓やシンバルを単品販売せず「ドラムセット」としてまとめて販売する
(すべての単品は個別購入できない) - パソコン単体では販売せずに、メーカーが指定したオペレーティングシステムを組み込んで販売する。
- 組立家具に組み立てに必要な工具を同梱して販売する
(単体で買う選択肢は無いがオペレーティングシステムは単体で購入できる) - 個別に購入できる選択肢が残されている
つまり、法律的な理由や技術的な理由でもう1つ商品が必要な場合や、商品それぞれで単一の特徴を持つ場合は違法になりません。特に2つの商品間に密接な補完関係がある場合は、セット購入を強制される場合でも違法にならない場合があります。
では、反対に違法となった事例をご紹介します。
違法となった事例
有名な事件として「藤田屋事件(ドラクエ)」があります。以下にて内容を要約します。
- 藤田屋はドラゴンクエストⅣを一次卸売業者から購入
- ドラクエⅣ発売時には消費者が店頭に殺到することが予想され小売業者はの入荷量確保に躍起となる状況にあった
- 藤田屋はこのような状況においてドラクエⅣの販売に当たり同社に在庫となっているゲームソフトを処分することを企画
- 在庫となっているゲームソフト3本を購入することを条件にドラクエⅣ1本を販売すること等を商品案内を送付
- 他のゲームソフトを抱き合わせて購入させた
この事件では公正取引委員会から「不当にドラクエⅣの供給に併せて他のゲームソフトを自己から購入させていたものであって,これは一般指定第10項に該当し独占禁止法第19条の規定に違反する。」として審判手続を行いました。
結果、藤田屋はドラゴンクエストⅣを販売する条件として、同社に在庫となっていた他の家庭用テレビゲーム機用ゲームソフトを抱き合わせて購入させていたが、この行為を取りやめたこと及び今後は同様な行為を行わないことを取引先小売業者に周知徹底させることとしました。
3.抱き合わせ販売とセット販売の違い
抱き合わせ販売とよく似た言葉として「セット販売」がありますが、セット販売は違法性がなく複数の事業者がセット販売を活用して売上を伸ばしています。
では、抱き合わせ販売とセット販売の違いはなんでしょうか。
まず抱き合わせ販売は「顧客・消費者のメリットにならない(顧客・消費者が仕方なく買わされる)2つ以上の商品の組み合わせ」とされています。一方でセット販売は「顧客(買う側)が満足する2つ以上の商品の組み合わせ」とされており、商品を組み合わせて販売することでユーザーメリットがあるかどうかが大きな違いです。
4.まとめ
抱き合わせ販売の基準は難しい、事前に公取委に相談を
このように抱き合わせ販売に該当するかどうかは非常に判断が難しく、我々がセット販売と認識して商品を組み合わせて販売した場合でも、公正取引委員会次第で違法とみなされる場合があります。判断に迷った場合は、販売前に公正取引委員会へ相談するのが賢明です。
また、セット販売として打ち出した後に「違法である」と公正取引委員会から申し入れがあった場合でも、本来売れないはずの商品を無理に販売しようという意図がなければ粘り強く交渉することも重要です。
出典:公正取引委員会(審判及び訴訟)